【コラム風日記】不思議な体験
これは、私がまだ小学生低学年の時のことである。
科学では考えられないような世にも不可解な体験をした。それは、灼熱の太陽が照りつける小学校2年の夏休み。
私は近所の友達5人とかくれんぼをしていた。
その時の私は、世間一般の常識も知らないし、良し悪しの分別など、全く持ち合わせていなかった。無敵のクソガキであった。じゃんけんをし鬼が決まると、私は一目散に鬼から遠ざかる。小学生の時から人一倍、いや三倍負けず嫌いな私はかくれんぼであったとしても本気だ。命を懸けていた。
皆各々鬼から隠れる。私は、この地域において絶対見つかることのない絶好の隠れ場所を知っていた。その隠れ場所というのは、古びた印刷工場の隣にある不気味なお屋敷である。アダムスファミリーが住んでいそうなお屋敷。とても不気味で薄暗い。
私はお屋敷の高い柵をよじ登り、屋敷内に侵入し隠れることにした。今考えれば、立派な犯罪である。庭の木陰で一時間ほど待ち続けた。
誰も来ない。声もしない。鬼は諦めたか。そう思ったその時、屋敷の玄関が開いた。
住人らしい人が出てきた。私は焦った。見つかったら何をされるか分からない。子どもにとって大人に怒られることはなによりも恐怖である。慌てて逃げようとしたが、正面から出るとバレてしまう。そうだ、庭の柵から外に出よう。そう思った。しかし、内側の壁が高い。小学生では、ジャンプしても届かない高さだ。
どうする?どうしよう!焦る。ここでもたもたしていたら、大人に見つかり何をされるか分からない。何か段差になるものがあれば柵に手が届くのに、そうして探していると、壁の近くにポツンとお地蔵さんが置いてあるのに気づく。
およそ50cmほどの地蔵。これに足を掛ければ柵に手が届く。しかし、子どもながらに内心それは悪いことではないかというのは感じていた。お地蔵さんを踏み台にするなんて、バチが当たるんじゃないか。
しかし、そうこうしてるうちに後ろからは大人の足音が近づいてくる。私はなりふり構わず地蔵のちょうど左肩に足を掛け、一気に踏ん張り柵を掴んだ。
その瞬間、バキッ!と嫌な音が。なんと地蔵の左腕が肩から取れてしまった。私はやってしまった。と後悔した、が、後には引けず、勢いそのままに屋敷から脱出した。私が屋敷から出て来た頃にはかくれんぼはいつの間にか終わっていた。
他の皆は家路についていた。私もしぶしぶ、家に帰った。
その夜。
寝ようと思いベッドに入ると、突如、左腕の痺れにみまわれた。左腕全体が、ジンジンと脈打ち、謎の痺れにより、全然眠れない。なんだ?この痺れは?
私は、昼のかくれんぼのことを思い出した。屋敷を出るとき、確かお地蔵さんの肩を壊した。それだ。左肩、あの壊した地蔵と同じ左腕。たちまち恐怖に駈られ、左腕を抑えながら、母親の布団に逃げ込んだ。
次の日。
朝目覚めると、左腕の痺れはまだ残っていた。そして、見てみると左腕全体が赤く腫れ上がっていた。驚いた母親は私を病院に連れていき、詳しい検査を受けた。しかし、医師は原因が分からないと言った。医師になにか心当たりはないか?と尋ねられたが、地蔵の左腕を壊したなどと言えるはずがなかった。
しばらく赤い腫れは引かなかった。私はどうしてもあの地蔵が気になり、後日、両親と共にお屋敷を訪ねた。正面から入ると、お屋敷の主であろうお爺さんが出迎えてくれた。
歳は70代といったところだ。両親が話をしている隙に、庭であの地蔵を探した。そして、地蔵を発見した。よく見ると、私が壊した左腕は綺麗に元通りにされていた。
私はホッとした。しかし、これではいけないと感じた私は、お地蔵さんの前で両手を合わせて何度も何度も謝罪をした。何度も何度も。それから、家に帰ると、今まで赤く腫れ上がっていた左腕の腫れは引き、痺れもなくなっていた。
あれは一体なんだったのだろう?地蔵の霊に取り付かれたのだろうか?原因は今となっても分からないままだ。これが私が小学生の時にした世にも不可解な体験である。
皆さんも私と似たような体験はありませんか?
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