【コラム風日記】浮浪者

7月 24, 2019

喉が乾いたので飲み物を買おうと自販機を探す。大衆居酒屋の角を曲がった細い路地裏に自販機が2台あった。自販機の前には先客がいる。

季節は冬だというのに格好はワイシャツに短パン。しかも、相当汚れている。

歳は60代くらいか、腰が90度曲がっており、常に謝罪会見をしているみたいだ。いわゆる浮浪者だ。様子を見ていると、どうやら自販機の小銭が出てくる四角い窓口をちょろちょろとまさぐっている。なるほど、おつりの取り忘れを狙っているのか。

私に気づいたのか、浮浪者は二、三歩後に下がり、どうぞ、どうぞと言わんばかりに、私に自販機を譲ってくれた。私は軽く会釈してから、自販機の前に立つ。なぜ私が気を使わないといけないんだと思った。

まぁいい、そんなことより今私は喉が乾いているのだ。財布から小銭を探す。110円、あと20円足りないな。仕方なく千円札を自販機に入れる。後に鋭い視線を感じて振り返る。さっきの浮浪者がまだいる。

不気味だ。まるで、サバンナで傷付いた大型の動物が力尽きるのを待っているハイエナのようにその期をうかがっている。

私は自販機のボタンを押した。ガチャン!ジュースが出てくる。

私は、素早くジュースとおつり870円を取りだし、その場を後にした。少し歩き出してから、後を振り返ると浮浪者はまだいた。

次の瞬間

その浮浪者は私がジュースを取りだした直後の自販機のおつりの窓口をちょろちょろとまさぐっていた。なんとも不思議な気持ちになった。それと同時に腹立たしくもあり、浮浪者をどうしようもなく見下した。

その時、浮浪者の手に光るものが。まさか!そんなバカな!私が100円を取り忘れていたのか!?

急いで財布の中を確認する、、、、足りない。100円足りない。

くそ!やられた!怒りがケトルのように沸き上がる!返してもらおう!と顔を上げた時にはもう遅かった。目の前から浮浪者はいなくなっていた。

数秒前の出来事だ。

ハイエナの大勝利だった。